知っておきたい子宮筋腫の知識
- Koyanagi
- 2018年12月26日
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子宮筋腫とは
子宮筋腫とは、子宮にできる良性の腫瘍のことです。子宮筋腫は、婦人科が扱う疾患の中で最も多いもので、症状がまったく無い人も含めると、30才以上の女性のおよそ4人に1人には見つかる身近な病気です。子宮は受精卵が着床して胎児が育つ場所で、(通常の あるいは 妊娠していない時の ←追加)大きさは、レモン或いは鶏卵くらいです。子宮筋腫は子宮にできる「こぶ」のようなものです。小さいものは米粒ほどですが、大きくなるとキャベツほどになったり、まれには、スイカくらいの大きさになったりする場合があります。これほど患者の数が多い病気にもかかわらず、子宮筋腫ができる原因や発病の仕組みは分かっていません。女性ホルモンがまだ分泌されない、初経前の女児にはまれにしか見られないこと、閉経後は筋腫が小さくなることから、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)が筋腫の成長に深く関わっているのではと推測されています。筋腫は原因がわかっていないため、予防法はありませんが、大きさや数が増大しても悪性腫瘍に変化する可能性は極めて低く、恐れる必要はないと考えられています。

症状
子宮筋腫で受診する患者さんの多くは、無症状で婦人科の検診で筋腫を指摘されたというケースがほとんどですが、一方で子宮筋腫により引き起こされる症状に悩まされる人もいます。症状としては、月経時の出血量が多い、貧血、腰痛、頻尿などが現れます。子宮筋腫の症状の中で最も多く見られるのは出血量の多さ(過多月経)です。「ジャーという感じで大量に出血する、頻繁にナプキンを取り替えないと下着を汚してしまう、レバーのような血の固まりが出る」といった異常な月経となり、それに伴って「めまいがする、体がだるい、動悸がする、息ぎれがする」などの貧血の症状が現れます。普通の月経であれば貧血が起こるということはないため、軽度でも貧血がある場合は原因を探ることが必要です。また、日常生活に支障をきたすような激しい月経痛が起こる事もあります。また、筋腫によっては、子宮の周囲の臓器が圧迫され、それに伴った症状が出てきます。例えば、膀胱や尿道が圧迫された場合には「頻尿になる、尿意はあるのに尿が出ない、尿がもれる」といった排尿障害が現れます。また、筋腫が直腸を圧迫しているために「便秘」になったり、筋腫で腰椎を圧迫されて「腰痛」が起こることもあります。
できる場所
子宮筋腫は筋腫のできた場所により、次の3種類に分けられます。子宮の内側は子宮内膜という粘膜で覆われています。子宮筋腫は、①子宮内膜のすぐ下にできる(粘膜下筋腫)、②子宮の筋肉の中にできる(筋層内筋腫)、③子宮の外側に突き出すようにできる(浆膜下筋腫)という3つのタイプがあります。
検査
子宮筋腫の有無は、婦人科の内診と超音波検査(エコー)で調べます。さらに子宮筋腫の位置や大きさ、数など詳細な情報を得るために、MRI(磁気共鳴画像)検査を行なうこともあります。
妊娠、出産への影響
子宮筋腫があっても妊娠、出産をする人はたくさんいます。しかし、子宮筋腫ができた場所や大きさ、数によって妊娠、出産に影響が見られることがあります。例えば、卵管の近くに子宮筋腫ができると、卵の通り道が塞がれて子宮に入りにくくなり、不妊の原因になることがあります。また、子宮筋腫が子宮内膜から飛び出すようにできていると受精卵が着床しにくくなります。また、たとえ妊娠したとしてもその後の胎児の発育に影響する場合もあります。例えば、子宮の外に向かって突き出すタイプであっても、妊娠によるホルモンや血液の関係で子宮筋腫が大きくなると早産の原因になることがあります。一方、血流の変化で胎児の発育に影響が現れることもあるほか、出産の際に子宮筋腫が妨げになって帝王切開になることもあります。
治療
子宮筋腫があっても症状がない場合や症状の軽い場合は経過観察を行ないます。6ヶ月から1年に1回位のペースで子宮の状態と子宮筋腫の大きさの変化など定期的に見ています。一般的に「普通の筋腫と比べて成長するスピードが速い、閉経後に大きくなる」といった場合は、子宮肉腫という悪性腫瘍が疑われる場合もありますので、精密検査を行なう場合もあります。
薬物療法:子宮筋腫を根治する薬はないため、薬物療法では、症状を緩和・改善する対症療法を行ないます。例えば、貧血があれば、造血剤で貧血を改善し、痛みがあれば鎮痛剤を処方します。ホルモン剤を服用するホルモン療法には月経の量を減らしたり、月経を止めたりすることで貧血や月経痛を抑え、子宮筋腫を小さくする効果があります。また、手術の前に子宮筋腫を小さくするために行なうこともあります。
手術療法:症状の改善と子宮筋腫を根本的に治すことが可能です。手術は子宮筋腫だけを切除する手術と子宮ごと摘出する手術の2つがあります。子宮筋腫だけを切除する手術では子宮が残り、将来妊娠することも可能ですが、25%の人が再発するといわれています。子宮ごと摘出する手術は、月経がなくなり、妊娠できなくなりますが、再発のリスクはなくなります。子宮ごと摘出する手術でも卵巣を残せば女性ホルモンのバランスは崩れることはありません。
どの治療法を選ぶかは「筋腫の状態(数、大きさ、肉腫の可能性があるかどうかなど)、症状の程度、患者さんの年令、妊娠への希望」などを考慮して決めます。婦人科医とよく相談して納得の行く治療法を選択しましょう。
(2017年 Enjoy 掲載原稿)
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